工場やオフィスビル、病院、学校などの大きな施設では、毎日大量の電気が使われています。
発電所から供給される電力を、電気を使う場所に合わせた電圧まで変圧(降圧)する必要があります。
必要な箇所に合わせて降圧され、各所に適切に電気を配分する重要な役割を果たしているのが「受変電設備」です。
この記事では受変電設備工事の基本から、その重要性、耐用年数、そして定期点検の必要性について詳しく解説します。
また、適切な資格と知識を持った業者の選び方や、アフターサポートの重要性にも焦点を当てています。
受変電設備工事の概要を知り、電気を安全安心に使うことができるお手伝いになれば嬉しいです。
株式会社 林田電気工業
林田竜一
代表取締役
行橋市で電気工事会社を経営しています。お客様ひとりひとりに丁寧に対応し、電気でつなぐ明るい未来をスローガンに地域に貢献できるように努めています。
半世紀の歴史!
福岡県行橋市の電気会社
林田電気工業
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受変電設備とは、電力会社から供給される高圧電力を、工場やビル、病院、学校などの施設で安全に使用するための適切な電圧に変換するための設備のことです。
工場やビル、病院、学校では多くの電力が消費されるため、電力会社から供給される電力が多いため独自の設備が必要になります。
受変電設備によって、業務用エアコンをはじめとする各種電気設備が安定して動作することが可能になります。
電力の効率的な利用と安定供給は、エネルギーコストの削減と設備の長寿命化に直結しています。
また、電気の異常の発生は火災のリスクが高まるとても危険なこと。
受変電設備が正常に稼働することで、施設内の電力供給が安全に行われているのかを確認することができます。
受変電設備は、大規模な施設での安定した電力供給と安全な電気使用を可能にするために不可欠な設備です。
また、一般的な戸建て住宅などはすでに電圧が下げられた「低圧電力」を受電しているため、受変電設備は必要ありません。
受変電設備は、大規模施設の電力供給システムの安定・安心供給に欠かせない装置です。
主に以下の3つの重要な機能を持っています。
電圧の変換
受変電設備には変圧器(トランス)が含まれています。
変圧器は、電力会社から供給される高圧電力を、施設内で安全に使用できるように低い電圧に変換します。
これにより、業務用エアコンや照明などの様々な電気機器が安全に稼働できます。
電力の分配
変圧器によって変換された電力は、配電盤を通じて施設内の様々な場所や機器に配分されます。
配電盤は、電力を各部分に分配し、必要に応じて電流の量を調整する役割を果たします。
電力が必要なエリアや機器に適切な電力を供給されることで、全体の電力使用を効率化します。
これにより、エネルギーの無駄遣いを防ぎ、コスト削減にも寄与します。
安全性の確保
受変電設備には、過電流、短絡、過負荷などの異常が発生した際に電気設備を保護するための機能が備わっています。
これには、遮断器や保護リレーなどの安全装置が含まれます。
安全装置は、異常が発生した際に自動的に電力供給を遮断する役割をになっています。
いざという時に電力供給を遮断することで火災や機器の損傷、さらには人的事故を防ぐために重要な役割を果たします。
受変電設備の耐用年数は、製造メーカーや製品の種類によって異なります。
電気機器 | 法定耐用年数 | 実用耐用年数 |
---|---|---|
変圧器 | 15年 | 20~30年 |
進相用コンデンサ | 15年 | 20年 |
高圧遮断器 | 15年 | 20年 |
断路器 | 15年 | 20年 |
電力ヒューズ(屋内用) | 15年 | 15年 |
電力ヒューズ(屋外用) | 10年 | 10年 |
高圧負荷開閉器(LBS) | 15年 | 20年 |
高圧カットアウト(PC) | 15年 | 20年 |
電力ヒューズ | 15年 | 20年 |
高圧負荷開閉器(LBS) | 15年 | 20年 |
高圧カットアウト(PC) | 15年 | 20年 |
一般的には約25~30年と考えられています。
耐用年数には二つのタイプがあります。
「法定耐用年数」と「実用耐用年数」です。
法定耐用年数とは、あくまでも減価償却の基準となるもの。
実際に運用していく上で重要となるのは実用耐用年数です。
JIS規格(工業標準化法)により設定されています。
(参考:日本規格協会グループ https://www.jsa.or.jp/ )
実用退年年数とは物理的な寿命のことを指します。
実用耐用年数の方が法定耐用年数よりも長く設定されています。
受変電設備は、変圧器、コンデンサ、避雷器など、さまざまな機器から構成されており、それぞれに異なる耐用年数があります。
例えば、変圧器の場合、法定耐用年数は15年ですが、実際には約20年程度使われることが多いです。
一方、コンデンサや避雷器などの他の機器は、実用耐用年数が約15年程度とされています。
それぞれの機器で耐用年数が異なること。
また、電力の変換で大きな労力がかかる装置であることから、定期的な点検が必要な装置の一つです。
耐用年数を超えた場合のリスク
耐用年数期間を超えると、以下のようなリスクが高まります:
①性能の低下
経年による劣化により、設備の効率が低下し、電力損失が増加します。
②故障のリスク増加
老朽化した機器は故障しやすくなり、突発的な停電や機器の損傷が発生する可能性があります。
③安全上の問題
絶縁不良や配線の問題により、感電や火災のリスクが増加します。
受変電設備の保安義務
受変電設備は「電気工作物」の一つです。
そのため、電気保安点検が電気事業法によって義務づけられています。
(参考: 経済産業省 https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/detail/setsubi_hoan.html )
電気保安点検とは、電気設備の安全性を保つために定期的に行うことが義務づけられている点検のことです。
適切な保安点検をせずに事故が発生した場合は、電気事業法第118条により、300万円以下の罰金が科せられます。
また、電気安点検は電気主任技術者などの専門的な資格が必要となります。
受変電設備には「開放型(オープン型)」と「閉鎖型(キュービクル型)」の2種類があります。
それぞれに特徴や設置方法が異なります。
開放型(オープン型)
開放型受変電設備は、機器が露出している形式の設備です。
カテゴリ | 詳細 |
---|---|
構造 | 電気機器が開放的に配置され、フレームやパイプで支えられています。 |
メンテナンス | 電気機器が剥き出しになっているため、メンテナンスや修理が比較的簡単に行えます。 |
冷却効率 | 開放的な構造のため、自然冷却が効果的に働きます。 |
安全性 | 露出している機器は、外部からの物理的な影響や環境要因による損傷のリスクがあります。害獣の被害にも合いやすいデメリットも抱えています。感電の危険性もあり、受変電設備周辺の安全保護が必要となります。 |
設計 | 大きなスペースが必要な設計になっています。 |
閉鎖型(キュービクル型)
キュービクルと呼ばれる金属製の箱の中に、受変電設備の機器をすべて詰め込んだタイプです。
カテゴリ | 詳細 |
---|---|
構造 | 電気機器が金属製の箱(キュービクル)やキャビネットの中に完全に収められています。キュービクルによって機器は外部の影響から保護されます。 |
安全性 | 機器が完全に囲まれているため、外部からの物理的な影響や環境要因による損傷のリスクが低減されます。また、感電のリスクも減少します。 |
設計 | コンパクトな設計のため、設置に必要なスペースが少なくて済みます。そのため、スペースが限られている都市部の施設に特に適しています。 |
冷却の考慮 | 密閉された空間内での熱管理が必要です。そのため、機器の過熱を防ぎ、性能を最適に保つために適切な冷却システムの設計が重要です。 |
開放型と閉鎖型(キュービクル型)の比較
特徴 | 開放型受変電設備 | 閉鎖型受変電設備(キュービクル) |
構造 | 電気機器が露出し、フレームやパイプで支えられている | 電気機器が金属製の箱やキャビネット内に収められている |
アクセス性 | 機器へのアクセスが容易で、メンテナンスや修理が比較的簡単 | 機器へのアクセスが限られるため、メンテナンスや修理がやや困難 |
冷却効率 | 自然冷却が効果的 | 密閉された空間内での熱管理が必要で、適切な冷却システムが重要 |
リスク | 外部からの物理的な影響や環境要因による損傷のリスクがあり、感電のリスクが高い | 外部からの物理的な影響や環境要因による損傷のリスクが低減され、感電のリスクが低い |
スペース効率 | 大きなスペースが必要 | コンパクトな設計で設置に必要なスペースが少ない |
現在では安全性や必要スペースの観点から、閉鎖型(キュービクル型)がメインとなっています。
開放型の受変電設備はほとんど使用されなくなってきています。
受変電設備工事は、電力会社から供給された高圧(特別高圧)の電気を、用途に合った電力(電圧)に変えるための重要な工事です。
事業所の要求に応じて変圧の度合いが決まり、それに基づいて設備の種類も選定されます。
受変電設備工事における主な作業内容を説明します。
工事の主な作業内容
受変電設備工事には、以下のような多様な作業が含まれます
①トランス更新
トランス(変圧器)は変電の役割を果たし、電圧を変えるために使用されます。
技術の進化に伴い、新しいトランスに更新することで省エネを図ることができる場合もあります。
②トランスオイル交換
トランス内の絶縁油(トランスオイル)は、長期間の使用で劣化します。
そのため、定期的な交換が必要です
トランスオイルの定期的な交換によって漏電のリスクを減らし、安全運用を確保します。
③高圧遮断機の交換
電気回路の故障や異常時に電流を遮断する役割を担っているのが高圧遮断機です。
安全性を維持するために重要な装置のため、定期的なメンテナンスが必要です。
場合によっては交換を行い、安全を保つことも重要です。
④分電盤の交換・増設
受変電設備を通じて得られた電気を各所に送るための分電盤(ブレーカー)の交換や増設が行われます。
これにより、電気の分配や漏電事故の防止を図ることができます。
⑤接地(アース)の改修
電気設備が不具合を起こした際に、電気の逃げ道を確保するための仕組みを接地(アース)といいます。
適切なアースの設置により感電のリスクを減らすことができます。
⑥熱対策
受変電設備内で発生する熱を効果的に排出するために行う換気扇の取り付けや交換工事を行う場合があります。
設備の過熱を防ぎ、稼働率を維持します。
⑦サビ対策
受変電設備の外枠は主に鉄製で作られています。
また、内部の大半も鉄製です。
経年劣化によって生じるサビは鉄を脆くし、故障の原因となります。
サビ防止対策やサビてしまったものの対策は適宜必要な工事となります。
⑧小動物侵入対策
ヘビやネズミなどの小動物が設備内に侵入し、故障の原因となることを防ぐための対策が必要です。
侵入を許すと、ケーブルの外皮を噛みちぎったりして漏電の原因となります。
また、生き物自体が感電した場合には事業所の電気を止めてしまうことがあります。
そのため、小動物侵入対策を行う必要があります。
⑨高調波対策
電気を変圧する過程で発生する高調波による影響を抑制し、設備の適正な稼働を確保するための対策を行います。
高調波対策を行うことで、設備を適正に稼働させることができます。
受変電設備工事 | 作業内容 |
トランス更新 | 古い変圧器を新しいものに更新し、効率と安全性を向上させる。 |
トランスオイル交換 | 変圧器内の絶縁油を交換し、漏電のリスクを減らす。 |
高圧遮断機の交換 | 故障や異常時に電流を遮断する高圧遮断機を新しいものに交換する。 |
分電盤の交換・増設 | 電力の分配を行う分電盤を交換または増設し、漏電事故の防止を図る。 |
接地(アース)の改修 | 電気設備の不具合時に感電を防ぐための接地システムを改修する。 |
熱対策 | 換気扇の取り付けや交換により、設備内の熱を効果的に排出する。 |
サビ対策 | 設備の外枠や内部の鉄製部分に対する錆び防止対策を実施する。 |
小動物侵入対策 | ヘビやネズミなどの小動物が設備内に侵入するのを防ぐための対策を行う。 |
高調波対策 | 電気を変圧する過程で発生する高調波の影響を抑制するための対策を実施する。 |
受変電設備工事は、大規模施設の電力供給において重要な役割を果たします。
適切な業者の選定と保安義務の遵守は、施設の安全性と効率性を保つために不可欠です。
信頼できる業者を選び、安心安全に受変電設備の運用を行うことが大切です。
ここでは、受変電設備工事の業者選びのポイントを解説します。
受変電設備工事の業者選定のポイント
受変電設備工事の業者を選ぶ際には、次のポイントを念頭に検討してみてください。
①経験と専門知識
長年の経験と豊富な専門知識を持つ業者は、複雑な問題に対応でき、信頼性の高いサービスを提供できます。
多くの機器の組み合わせで構成されている受変電設備工事は様々なトラブルに合わせた対応が求められます。
経験豊富な業者にお願いすると安心です。
また、受変電設備にトラブルが生じると施設の電気供給が止まってしまうことがあります。
電気供給が止まると、大きな損害が生じることも。
地元の信頼できる業者を選ぶことも大切な要素の一つです。
②アフターメンテナンスとサポート、対応の速さ
工事後の継続的なメンテナンスやサポートを継続して依頼できる業者を選びましょう。
受変電設備は長期的に安定して運用する必要がある設備です。
また、前述の通りトラブルが生じると大きな損害に直結してしまう恐れもあります。
定期的なメンテナンスとサポート。
そして、いざという時に迅速に対応してくれる業者を選びましょう。
受変電設備の保安義務
受変電設備工事には、以下のような保安義務が伴います。
法的規制の遵守
電気事業法や関連する規制に基づく保安規定を遵守することが義務付けられています。
これには、設備の安全な運用と保守に関する規則が含まれます。
電気主任技術者の選任
高圧受電を行う施設では、電気主任技術者を選任することが法律で義務付けられています。
この技術者は、受変電設備の安全管理と適切な運用を担う責任者です。
電気主任技術者を擁している業者かどうかを確認しましょう。
いかがでしたか?
受変電設備工事は、工場やオフィスビルなどの大規模施設における電力供給を安心安全に運用するための重要な工事です。
この工事は、電力会社から供給される高圧電力を施設で使用可能な電圧に変換し、安全かつ効率的に配分するために行われます。
設備の安全性と効率性を維持し、長期的な安定運用を確保するための点検や、トラブルの原因の早期発見、対策工事は必須です。
受変電設備工事には法的な保安義務が伴います。
電気事業法や関連する規制に基づく保安規定の遵守、電気主任技術者の選任、定期的な点検とメンテナンスを行ってくれる業者選定が安心です。
受変電設備工事の適切な実施と保守は、施設の安全性と効率性を高め、長期的な運用コストの削減にもなります。
電気を安心安全に使うために、定期的なメンテナンスを安心できる業者に依頼するきっかけになりますように。
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