非常用照明設備工事って?設置基準や種類を詳しく解説

非常用照明設備をご存知ですか?

非常用照明器具とは地震や火災などの災害時に通常の電源が絶たれた際に備えて設置されている、予備電源によって点灯する照明器具のことです。

停電時に一定の明るさを確保し、避難する時の明るさを確保してくれます。

非常用照明器具は安全な避難活動を促すために必要不可欠な設備です。

日常的に使うことがない設備なので「非常用照明器具」と聞いてもピンと来る方も少ないかもしれません。

もちろん、使う機会がないことが望ましい設備です。

しかしいざという際には命を守るために必要な設備。常日頃のメンテナンスや適切な箇所への設置が必要です。

この記事では、非常用照明設備の種類や設置基準、工事内容や工事業者の選び方について詳しく解説します。

非常用照明設備の理解を深めて、いざという停電に備えるお手伝いになれば嬉しいです。

この記事の監修者

株式会社 林田電気工業

林田竜一

代表取締役

1級電気工事施工管理技士

行橋市で電気工事会社を経営しています。お客様ひとりひとりに丁寧に対応し、電気でつなぐ明るい未来をスローガンに地域に貢献できるように努めています。

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非常用照明設備とは?

引用:パナソニック社

非常用照明設備は、地震や火災などの災害が発生した際に通常の電源が使用できなくなった場合でも、建物の通路や居室に必要な明るさを確保するための重要な防災設備です。

非常用照明設備は、内蔵されたバッテリーによって自動的に点灯するため、停電時でも人々が安全に避難できるよう支援します。

非常用照明設備の設置義務や基準は建築基準法によって定められています。

新築される建物や既存の建物の維持管理をする際は、非常用照明の適切な設置を法律に従って行う必要があります。

また、建築基準法第12条に基づき、非常照明設備は定期報告の検査項目の一つとされています。

非常用照明を設置している建築物の所有者や管理者は、定期的に資格を持った専門家による検査を受けることが義務つけられています。

検査後は地方自治体への検査結果を報告する必要もあります。

非常用照明を設置する際には、検査・報告の概要も把握しておく必要があります。

参考|福岡県  特定建築物等の定期報告制度について

内蔵型と別置型

非常用照明設備は、そのバッテリーの設置位置によって「内蔵型」と「別置型」の2つのタイプがあります。

これらのシステムは非常時に建物内を照明するために設計されており、それぞれに利点と使用される建物のタイプが異なります。

内蔵型非常用照明設備

内蔵型非常用照明設備は、照明器具内にバッテリーが内蔵されているタイプです。

内蔵型非常用照明設備は主に中小規模の建物で採用されており、バッテリーの充電状態を示す緑と赤のモニターランプが特徴です。

内蔵型非常用照明設備の最大の利点は、照明器具一つ一つが独立して機能するため、配線が簡単であり、一般電線を使用できることです。

これにより、設置コストを低く抑えることができ、小規模施設に適しています。

別置型非常用照明設備

別置型非常用照明設備は、非常用照明器具とは別にバッテリーを設置するタイプです。

大規模な施設でよく採用されます。

別置型非常用照明設備の主な利点は、一つのバッテリーから複数の照明器具へ電流を供給できることです。

大きな建物では非常照明の数が多くなるため、内蔵型のように各照明器具のバッテリーを個別に点検・交換する必要がなく、メンテナンスの手間とコストを大幅に削減できます。

しかし、別置型はバッテリーから照明器具までの配線に耐熱・耐火性が求められ、蓄電設備の開発も必要となるため、初期投資が高くなりがちです。

特性内蔵型別置型
設置場所照明器具内にバッテリーが内蔵非常照明器具とは別にバッテリーを設置
適用建物中小規模の建物大規模な施設
特徴バッテリーの充電状態を示すモニターランプ付き、照明器具ごとに回路完結一つのバッテリーから複数の照明器具へ電流を供給
メリット設置が簡単、一般電線での配線可能、初期がコスト低い大規模施設におけるメンテナンスの手間とコスト削減、点検・更新の際に工数が少ない
デメリット点検やバッテリー交換が各照明器具ごとに必要配線に耐熱・耐火性要、初期投資が高い

LEDタイプの非常用照明器具

2014年11月にパナソニックがLEDタイプの非常用照明機器を発売して以来、省エネ性の高いLED非常照明が市場に多数登場しました。

LED技術は、従来の白熱灯や蛍光灯と比べて大幅に省電力であり、非常用照明が24時間連続して点灯する必要がある場合に特に適しています。

長期間の使用を考えているなら、LEDタイプの非常用照明を選択することをおすすめします。

LEDはエネルギー効率が高く、長持ちするため、非常用照明にぴったりの光源と言えます。

参考|Panasonic 非常灯(LED非常用照明器具)

非常用照明設備と避難誘導灯の違い

避難誘導灯の写真

「非常用照明設備」と「避難誘導灯」は、火災や事故が発生した際に人々が迅速かつ安全に避難を行うために設置される装置です。

どちらも人が多く集まる場所において、非常時に避難の誘導を行うなどの重要な役割を担っています。

「非常用照明設備」と「避難誘導灯」は、設置される目的が似ているために混合されがちです。

ここでは「非常用照明設備」と「避難誘導灯」の違いを詳しく解説します。

非常用照明設備

非常用照明設備は、停電時に室内、廊下、階段などを照らし、人々がスムーズに避難できるようにする照明装置です。

前述の通りバッテリー内蔵型と電源別置型の二種類があります。

法律により、非常灯は停電から30分以上点灯し続けることが求められてします。

避難経路を明るく照らして、安全かつ速やかな避難を支援します。

非常灯は建築基準法によって設置が義務付けられています。

避難誘導灯

避難誘導灯は、非常用照明設備と同様に火災や事故時の迅速・安全な避難を目的としています。

具体的には非常口(避難口)や誘導経路を示すために設けられています。

避難誘導灯は「避難する道筋をガイドする灯」として機能し、室内や廊下を照らす目的の非常灯とは異なります。

誘導灯は消防法によって設置が義務付けられています。

特性非常用照明設備避難誘導灯
目的停電時に避難経路を照らす避難時の方向を指示する
主な機能室内、廊下、階段などを明るく照らし、避難を支援非常口や誘導経路を示す
適用法律建築基準法消防法
設置場所室内、廊下、階段等の避難経路避難経路上の指示箇所、非常口付近
機能的な違い最低限の明かりを提供して避難経路を照らす避難口や避難経路をガイドする

非常照明設備の設置基準

引用:パナソニック社 youtubeチャンネル

非常用照明の設置基準と義務がある場所は、建築物の種類と規模によって定められています。

この項目では、非常用照明が必要とされる建築物の条件と、設置時に考慮すべき基準について説明します。

非常用照明が必要な建築物

建物内の部屋から外へとつながる廊下や階段、その他の通路には、非常用照明を設置する必要があります。

ただし、自然光が入るように直接外に開かれている通路はこの規則の対象外です。

これは、万が一の事態が起きたときに、人々が安全に避難できるようにするためです。

非常用照明が必要な建築物に関しては建築基準法施工令によって次のように指定されています。

  1. 特殊建築物:以下のような用途で使用される建築物が対象です。
    • 劇場、映画館、演芸場などの娯楽施設
    • 病院、ホテル、共同住宅などの宿泊・居住施設
    • 学校、体育館などの教育・スポーツ施設
    • 百貨店、マーケット、展示場などの商業施設
  2. 規模:階数が3以上かつ延べ面積が500㎡を超える建築物、または延べ面積が1000㎡を超える建築物。
  3. 構造:無窓の居室を有する建築物。

参考:建築基準法施行令 第百二十六条の四

設置基準

  • 明るさ:非常用照明装置は、30分間点灯させた状態で、床面に1ルクス以上の照度を確保する必要があります。
  • 耐熱性:非常照明器具は、140℃の火熱に30分間以上耐えることが求められます。これは、消防隊の救助活動時にも機能を維持するためです。

設置が義務付けられている部分

  • 居室から地上に通ずる廊下、階段その他の通路(外気に直接開放された通路を除く)など、避難経路にあたる部分に非常用照明の設置が必要です。

これらの基準に基づき、多くの人が利用する公共の建築物や大規模な施設では、非常時に安全な避難を支援するために非常用照明の設置が義務付けられています。

非常照明設備の設置が免除されるケース

非常照明設備の設置は、特定の条件を満たす建築物に対しては免除されることがあります。

  • 自然光が十分に入る開放性の高い廊下や階段。
  • 個人所有の一戸建て住宅や、長屋、共同住宅の個々の住戸。
  • 病院の病室、下宿の宿泊室、寄宿舎の寝室など、プライベートな空間。
  • 学校や体育館、ボーリング場、スケート場などの教育・レクリエーション施設。
  • 避難する階、その直上階と直下階の居室で、非常照明の基準を満たしている場合。
  • 床面積が30㎡以下の小規模な居室で、必要な基準を満たしている場合。

非常照明の設置免除については、建築基準法に基づいて、建築や改修工事を行う際に専門業者との確認が必要です。

検討する際には専門業者に現地調査をお願いして計画することをおすすめします。

非常照明設備の工事について

非常照明設備工事には、電気工事士の資格が必要です。

設置の際は、必ず資格を保有する工事店などに依頼しましょう。

非常用照明は、建築基準法だけでなく、消防法においても設置・点検義務が定められています。

防火の対象にあたる建築物の管理者・所有者は、消防法に従って誘導灯を設置し、定期的な点検ならびに所轄の消防署への報告を行わなければなりません。

非常用照明の設置には、照明器具、電気配線、電源の3つの主要な構造基準があります。

ここでは、これらの基準について解説します。

非常照明設備|照明器具の種類と必要な照度

非常用照明設備の選定と設計においては、利用される照明器具が特定の要件を満たす必要があります。

これらの要件は、緊急時に建物内の安全な避難を確実にするために設けられています。

非常用照明として利用できる照明器具には、耐熱性と即時点灯性が求められます。

  • 白熱球:伝統的な照明方式であり、耐熱性がありますが、エネルギー効率は他の種類に比べて低い場合があります。
  • 蛍光灯:即時点灯性を持ち、エネルギー効率が良好ですが、寒冷環境下での性能が低下することがあります。
  • LEDランプ:耐熱性と即時点灯性に優れ、エネルギー効率が非常に高いです。長寿命でメンテナンスコストも低いため、最も推奨される選択肢の一つです。

非常用照明器具は、床面において1ルクス以上の水平面照度を提供する必要があります。

蛍光灯やLEDランプを使用する場合は、さらに厳しい基準として2ルクス以上の照度が必要となります。

この照度は、避難経路を十分に照らし出し、避難時の安全を確保するために重要です。

さらに、照明器具内の電線には絶縁性が必須であり、器具の主要部分は難燃材料で構成されている必要があります。

これは、火災発生時にも非常照明が機能し続け、避難活動を支援できるようにするためです。

このように、非常用照明設備には、安全性と機能性を確保するための厳格な基準が設けられています。

これらの基準を満たすことで、緊急時に建物内の人々が安全に避難できる環境を提供することが可能となります。

非常照明設備|電気配線

非常用照明の電気配線には、特別な基準があります。

これらの基準は、緊急時に照明が確実に機能し続けることを保証するために設けられています。

  • 独立した配線システム:非常用照明の配線は、建物内の他の電気配線とは完全に分けて設置する必要があります。これにより、一般の電気システムに問題が発生しても、非常用照明が影響を受けにくくなります。
  • 電源の遮断を防ぐ:非常用照明の電源は、一般の人が容易にオフにできないように保護する必要があります。これは、誤って電源が切られることによる照明の機能停止を防ぐためです。
  • 防火措置の強化:非常用照明の配線は、火災時にも機能を維持できるよう、耐火構造の主要部分に埋設される配線と同等かそれ以上の防火措置を講じる必要があります。これにより、火災による配線の損傷を最小限に抑え、緊急時の照明確保を図ります。

これらの基準により、非常用照明は緊急時における建物内の安全な避難を支援するため、信頼性と安全性を確保するために必要不可欠です。

非常照明設備|電源

非常用照明システムには、常用電源と予備電源の2種類の電源が必要です。

  • 常用電源:日常的に使用される電源です。
  • 予備電源:自動充電装置付きの蓄電池や、蓄電池と自家用発電装置の組み合わせから構成されます。

停電時には自動で予備電源に切り替わり、充電をすることなく30分間照明を継続できることが求めれられています。

これは、ほとんどの緊急避難が完了するであろう時間を考慮したものです。

また、予備電源の予備電源の開閉器には、それが非常照明用の電源であることを明確に示す表示が必要です。

これにより、誤操作を防ぎ緊急時の対応を迅速化します。

非常用照明設備工事を依頼する際のヒント

非常用照明設備は、火災や地震などの緊急事態時に建物内の避難を確保するための重要な設備です。

条例でも定期的な点検と報告が義務付けられています。

そのため、法律や条例に明るい有資格者の対応が必要となる工事の一つです。

有資格者が在籍している専門業者を選ぶ

非常用照明設備工事は専門的な知識と技術を要します。

そのため、第一種または第二種電気工事士の資格を持つスタッフがいるかを確認しましょう。

有資格者は、法律や規制に基づいた適切な設置を提案してくれることでしょう。

業者に非常用照明設備工事の経験があるかどうかの確認も合わせて行うとより安心です。

定期点検や自治体への報告を行える業者を選ぶ

非常用照明設備は、設置後も定期的なメンテナンスと検査が必要です。

また、設備の点検結果を報告することが義務付けられています。

このようなサービスを提供している業者を選ぶことで、長期的な安全性と法的要件の遵守が保証されます。

非常用設備工事業者を探す際には、定期点検を行なっているかどうかも確認すると良いでしょう。

自治体への報告も行ってくれるのかも合わせて確認することをおすすめします。

地元で長く携わっている業者を選ぶ

地元で長年営業している業者は、その地域の建築様式や過去の災害復旧などにも精通していることが多いです。

定期的な点検やメンテナンスが必要な非常用照明設備は、異常や不具合が発見された際に素早い対応が求められる設備でもあります。

万が一の時のために、地元の業者にお願いすることが安心の設備工事の一つです。

非常用照明設備工事のまとめ

いかがでしたか?

普段あまり耳馴染みのない「非常用照明設備」

非常用照明設備は火災や地震などの緊急時に建物内の人々が安全に避難できるようにするために不可欠な設備の一つです。

非常用照明設備はは、停電時でも機能し、避難経路を明るく照らす役割を果たす必要があります。

そのため定期的なメンテナンスや点検が義務つけられており、自治体への報告義務も有しています。

昨今増えている地震に備えるためにも、非常用照明設備の見直しを行ってみても良いですね。

いざという時のために命を守る大切な設備です。

安心できる業者に相談しながら、適切に設置することをおすすめします。

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